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ペットの法律・ペットと法律 喜多村 行政書士事務所
日本行政書士会連合会登録 第12080676号 東京都行政書士会 会員 第9030号
ペットが人にもたらしてくれるものは言葉では言い尽くせません。
そんなペットに自分の財産を遺すためには、まず民法の規定に沿う必要があります。
ペット自体は相続を受けることはできません。民法上動物は『物』とされ、相続を受けるために必要な『権利義務の主体』にあたらないため直接相続の対象にはなり得ないからです。
ただ、遺された財産をペット自体が直接活用することはできませんが、遺した財産でペットの世話をしてもらう間接的な方法は代表的なものとして@とA、一部可能性としてBが挙げられます。
負担付遺贈
遺言によってペットの世話を頼む個人・法人・団体等にそのための財
産を遺します。
負担付死因贈与
遺言によらず、あらかじめ世話を頼む個人・法人・団体等との合意を
交わします。
信託制度の利用
信託引受先の金融機関・法人等にその旨の財産を託します。
遺言によってペットに財産を遺すためには、まず遺言自体が有効であることが大前提です。
遺言は一生のうえでの最期の意思表示でもあるので、その意思はなにより尊重されるべきではありますが、その様式は民法第960条から第984条までに規定されており、しかも、冒頭となる第960条には『遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない』とあります。そして、ここでいう『することができない』とは、つまり『無効』を意味します。
遺言自体の効力が問われた際には、これらの様式を満たしていなければ、どれだけ思いの込められた内容であっても無効とされてしまうので、ご注意が必要です。
また、遺言によって財産を他の人に与えることを『遺贈』といいます。Aでご説明する『死因贈与』との違いは、遺言によるか、あらかじめ贈与者がお亡くなりになる以前に交わされている契約に従って行われる贈与であるかによります。
負担付遺贈
遺贈は贈与と違い契約ではなく、遺言をなさる方からの一方向性の意思表示なので、贈与を受ける者として指定をされた方は当然これを拒むことができますし、民法により、遺贈の対象物の目的価格以上の負担を負う義務(評価5万円の車を受けるのに10万円の費用がかかる、といった場合の差額5万円)はない、とされています。
無論、このような点以上に遺言をなさった方の意思を重んじ、負担の問題ではなく遺贈を受けられる方がほとんどと思われますが、例えば縁は薄いけれど遺言によってペットを贈りたいとする場合、そのペットが今後生きるであろう期間の食事や医療、飼育器具や理容にかかると思われるに足りる費用、あるいはプラスアルファを遺産としてペットと共に贈ると記す事で、遺言をなさる方にとっての遺贈の申し入れはより明確になります。
これでは遺贈に際しての相手方の負担は実質無いに等しくなるとも思えますが、売買や譲渡と違い、あらかじめそのペットを欲しいと思っているかどうかがわからない相手にとって、その世話自体が負担であると考えれば、それ以上の負担を贈り主の方が財産というかたちで賄うことによって、ペットにとっての『食』と『住』あるいは、『衣』や『医(動物にとっては『衣』よりむしろ重要かもしれません)』の保障につながると捉えることができます。
そしてもし、受ける者として指定された方がこれを拒んだとしても、なおペットと財産は共に在りますので、その後の協議の上で引き取ることになるかもしれないどなたかの負担を和らげ、ペットの健康と生命を守るための一部として活用されることにもなり得ます。
ただ、遺言によってペットと共に財産を遺す場合、他に相続の対象となるべき方のなかで、配偶者・お子様・ご両親がその申立てによって得ることができる最低限の金額(『遺留分』といいます)には影響の無いよう、ご配慮が必要です。
負担付遺贈が有効に効力を持てば、もし遺贈の受け手が負担することとされている義務を果たしていなければ、他に相続人がいる場合にはそれを果たす《履行》ことを要求《催告》できますし、それでもなお、履行がなされなければ、家庭裁判所に遺言の取消請求をすることができますので、相続なさる方々の事後の管理に期待を委ねることができます。
そして、思いを込めた願いが争いなく行われるために、遺言に関して中立の立場となる遺言執行者(民法第1009条にある一定の欠格事由にあたらなければ相続の対象となる方でも良いですが、その立場に求められる性質上、法律職に依頼なさる方法もあります。複数人でも構いません)を遺言で定めることで、履行の催告や遺言の取り消しの求めの意義をよりはっきりさせることも可能です。
また遺言自体の効力をあらかじめ公的に認められたものにしておくために、公正証書遺言(証人2人以上の立会のもと公証人が作成するもの)の形式にする方法もあります。
負担付死因贈与
贈与者の死亡を以って効力が生まれる負担付死因贈与は遺贈と異なり、あらじめ贈与を受ける方との合意が必要となりますので、契約の部類に属します。契約であるがためのルールは伴いますが、世話をしてくれる方が決まっている点では安心が得られると考えられるものでもあります。
この契約が実行されるに至ると、その後の手順は先に申し述べた遺贈に近いものとなりますが、遺言による場合と同様、ペットの世話のために贈与する財産が『遺留分』にくいこんでしまった部分については、遺贈を取り消してもこれに満たない場合に取り消しの対象にもなり得ますので、この点にもご配慮が必要かと思われます。
また、遺贈の場合は必然的に贈り主の意思が文書として残りますが、贈与は口頭の約束でも成立します。しかし相手方が以降この贈与についてしっかりと受けてくれているかについては、まず書面による契約として約束を交わし、さらに必要があれば、この贈与の実行についてを遺言に含めておく、などの方法も考えられます。
信託制度の利用
制度上、可能なシステムではありますが、現在も含めて今後有益なものとなるかはこれから次第だと思われます。
信託は財産の管理処分を、定めた目的に従って自己が(公正証書によってなされる自己信託)、あるいは他の者や法人・機関が行うものです。
2007年にアメリカの実業家女性が当時の日本円にして14億円分の遺産を愛犬のために使うようにとする旨の遺言を遺しました。そして直接関係性は無いようですが、これとほぼ時を同じくして日本の信託法が改正・施行され、『目的信託』の名目で、ペットのために管理される信託も認められるようになりました。
しかし、信託はそのほとんどが金融機関において運営されるものであるため、社会的な意義は認められつつも、扱い金額等の諸条件により、果たしてどこまで機能するかについてはまだ途上段階にあるようです。