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ペットの法律・ペットと法律 喜多村 行政書士事務所
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『寄託(きたく)』行為はある物を保管する約束のもと、預け主《寄託者(きたくしゃ)》から預かり主《受寄者(じゅきしゃ)》にそれを引き渡すことによって成立します。
旅行などで、ペットを預ける際、お知り合いに無償で預ける場合と、ペットホテル等に有償で預ける場合とでは、預かり主の保管義務の程度に異なりがあります。
無償の場合の預かり義務の程度を民法は『自己の財産に対するのと同一の注意をもって』と規定しているのに対し、有償の場合は『善良なる管理者の注意をもって』とし、注意義務の度合いを高めています。
つまり、すでにペットを飼っている知人に無償で預けた同種のペットに、その家で与えた食事によって健康上の問題が生じたとしても、預かり主が自分のペットと全く同じ食事を世話していたのであれば、注意義務の落ち度を問うことはできません。
この反面、報酬が伴っていれば、預かり主が業者さんであっても、業者さん以外の知人であっても『自己の財産』以上に注意を払うことが必要とされる『善良なる〜』に値する注意が施されていたかどうかについての指摘をすることができます。
寄託契約も委任と同様、無償が基本とされており、報酬について当事者間での特約の合意がなければ、預かり主から報酬を請求することはできません。
ただ、実際の場合にこの建前をそのままあてはめてしまうと、預かってくれたお知り合いに対しての義理を欠くことにもなりますので、報酬とは異なるお礼はつきものです。
しかし、預かっている最中や、預かりの事後にこれに対するお礼以上に報酬を請求された場合は、無償の原則や信義の原則に従ってこれを拒むことはできると考えられます。
業者さんとの寄託契約の場合には預けている期間中の日常の世話など、別種の契約が付随することが通常なので、各行為を契約種別で細分化すると複雑な契約内容になる場合がありますが、寄託契約に限れば、預け主にとって注意が必要なのは、以下の2点かと思われます。
相手との間で返還の時期を定めていても、期間中、預け主はいつでも
その返還を請求できます。
【民法 第662条 口訳】
預け主は預けた物の性質やその不完全なことが原因による損害を預か
り主に及ぼした場合には、その損害を賠償しなければなりませんが、
預け主が何の過失もなく性質や不完全を知らなかった場合 や、逆に預
かり主がそれを知っていた場合は、預け主は賠償の責任を負いません。
【民法 第661条 口訳】
また、何らかの理由で預けたペットを定めていた期間より早く引き取ることは原則として自由です。
これに対し、預かり主もあらかじめ返還の時期を定めずに預かったのであればいつ返しても良いのですが、時期を定めていたのであれば、やむを得ない場合以外に預かり主から期限前に返すことはできません
【民法 第663条 口訳】。
この点のみを捉えれば、寄託は預け主有利、預かり主不利の契約のようにも思えますが、預けていたペットが原因となる損害が発生した場合、その責任の所在は、その原因についてあらかじめ預け主が知っていたか、あるいは預かり主が知っていたかによって分かれます。
ペットを預ける寄託契約の際には、預け主のほうから返還時期を早めるキャンセルや、預けたペットが原因となる損害についての特約が含まれ、民法の原則を、これもまた別の原則である『契約自由』『私的自治』の主旨に基づいて、緩和あるいは強化を合意事項とするものがあるため、これが後に契約時の理解の相違という問題とならないよう、確認が必要と思われます。
契約の特徴からすると、『請負』ほどではないにしても、寄託契約も受け手にとって不利なものになりやすい種別ではないかと思われます。したがって、もし預けるほうは軽い気持ちであっても、これに伴う契約については万が一の責任の所在について細かな内容の契約が多いことが考えられます。
特に『預け主が知っていた場合』や『預かり主が知っていた場合』については、後になっての判断が容易につきづらいことが懸念されるので、あらかじめ納得のうえでの合意が重要です。