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ペットの法律・ペットと法律 喜多村 行政書士事務所
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賃貸契約の住居の場合での貸主と借主の関係は主に『借地借家法』によって規定されています。
借地借家法は民法の『特別法』にあたり、同一の事実については民法の規定よりもまずこの法律が優先して適用されます。
これは民法の『賃貸借契約』の様々な原則をそのまま住居についてあてはめてしまうと、借主にとって不利となる場面が多くなってしまいがちなので、貸主借主双方の権利と義務のバランスを整えるために制定された法律と考えることができます。
また、賃貸型の入居契約の場合は『宅地建物取引業法』により、入居に関して重要となる事項については書面による通知義務が課せられいますので、ペット飼育の可否については口頭の説明よりも、この書面で確認なさると良いと思われます。
所有型であっても賃借型であっても、あらかじめの禁止事項に反してはならないのは当然ですし、借主には貸主が賃貸する目的に応じた『用法遵守義務』があるので、お互いが契約で定めたことを守る必要があります。
しかし、何か権利や義務をめぐる衝突があり、後に契約解除や退去のレベルにまで及んだ場合、賃貸借の住居における契約に適用される独特の法律理論に『信頼関係破壊の法理』と呼ばれるものがあります。これは主に賃借権そのものにまつわるケースに使われていますが、ペットの飼育についても適用が考えられるものです。
その主旨は、貸主の側から借主の落ち度を理由とする契約解除や退去の申し出をしたとしても、その理由が貸主にとって何の不利益になるものでもなく、落ち度とされる借主の行為が貸主との信頼関係を著しく損なうものと判断をされなければ、貸主からの一方的な主張は認められないとするものです。
『信頼関係』といえば通常『お互い』を意味しますが、この理論では、借主の行為が貸主の信頼を損なうと言うに値するものであったかについてにを捉えています。
例えば、ペットの飼育について何も定められていない賃貸マンションに入居し、その後ペットを飼っていたら、貸主から突然にペット禁止を言われ理由を聞いてみたところ、退去する際の部屋の損傷具合が懸念されるから、との事。
現在の部屋を見たわけでもないし、常識をわきまえて飼育しているのにこれはおかしいと考え、再三貸主に話し合いを求めても先方はこれに応じず、その後もペットを飼い続けていたら契約解除の通告が来てしまった、というような場合、借主が用法遵守義務を怠っておらず、また信義の原則に照らしても、信頼関係を破壊すると言えるまでのことはしていないことを立証すれば、貸主からの契約解除権の発生は認められなくなることもあります。
また、引越し等による退去の際に納めていた敷金の返還の際、ペットによる損傷がどのように捉えられるかが問題になるケースはとても多いようです。
退去の際、部屋を元の状態に戻す『原状回復義務』に従って借主がそのための費用をどこまで、どのように負担するかについては、平成17年12月16日の最高裁判所判決が『賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されている。(中略)賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する(中略)減価の回収は(中略)賃料の中に含ませてその支払いを受けることにより行われている』と示し、『通常の使用』によって生じる部屋の価値の減少については、それまで納めている家賃からその補修に充てられ、敷金から充当されるべきではないとしています。
とは言え、『通常の使用』自体の定義は難しく、ましてペットが原因となる部屋の損耗が『通常の使用』にあたるかどうかもまだ明らかではありません。
しかし、これを曖昧なままにしておくと後のトラブルの原因にもなりかねないので、どこまでを通常の損耗とするかについて、あらかじめ合意しておく、『通常損耗補修特約』があります。
この特約が契約事項に含まれている場合には、納得のいく合意を結んでおくことが第一ですし、ペットの飼育について何の規定がない場合でも住居としての用法遵守義務は常に伴いますので、後々これを問題にしないためにも、入居後にペットを飼い始める場合には、あらためて貸主に対して確認をしておいたほうが良いかと思われます。