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ペットの法律・ペットと法律 喜多村 行政書士事務所
日本行政書士会連合会登録 第12080676号 東京都行政書士会 会員 第9030号
『委任』には何か重大事に関わることを連想させる響きがありますが、実生活ではごく当たり前に行われている契約事です。また『請負』も何となく工事や製造のような大がかりなイメージが湧きますが、そればかりではなく、これもやはり日常行われている契約の一種です。
そして『契約』となると更に力が入ってしまいそうですが、これがペットや個人に関する『準委任』や『請負』となれば、かなり身近なものになります。
『委任』と『準委任』の違いについては、法律講義になってしまいそうなので割愛させていただきますが、規定される内容はほぼ同じものです。
『準委任』と『請負』の日常例としては、
獣医さんによる診察、治療を受ける。 【準委任契約】
(内容によっては請負と考えられる説もありますが
準委任と解される場合が多いようです)
ペットサロンでカットをしてもらう。 【請負契約】
等が挙げられます。
意外なことですが、準委任を含めて委任契約は無償が前提とされています。そのため日常的に発生している代金を支払っての委任は、委任される側《受任者》が報酬を受けるにあたっての《特約》と表現され、受任者は有償・無償の区別なく、民法が記す『善良な管理者の注意(各種の注意義務のなかでも上位ランクの義務)』を以って受任したことに取り組まなければならないとされています。
したがって、この契約を受任者が怠った場合は依頼した際の報酬の有無や多寡によらず、契約を解除することができきますし、受任者がなすべきことを『債務』とすれば、これを『履行』しなかったことによる『債務不履行』が原因となって実際の被害を被っていれば、委任者からの損害賠償請求に至ることもあります。
また、委任については委任者・受任者のいずれからも契約を解除することができます。契約の解除は相手の債務の不履行等を基にするものでなければ、お互いに損害賠償を問題とせず行われますが、相手が既に行ったことについての未払い報酬が残っていればその支払いは必要ですし、あるいは相手にとって一方的に不利な時期の解除だとすれば、これによって被る相手方の損害に対する賠償を求められる場合があります。
ただし、民法ではこの一方的不利な時期での契約の解除について、『やむを得ない事由があったときには、この限りではない』とも規定されています。
何を以って『やむを得ない』となるかは個別の事情に基づくため一概に規定するのは危険かと思われますが、準委任も含めて委任契約は契約者間の信頼関係が基礎と解釈されることもあります。上記の一文はこれを最も顕すものであるとも考えられます。
日常それと知らず行われていることでも、事態によっては法律面が問われるというのはある意味やっかいでもあります。
もし、どなたか専門の方に繁殖のためのお見合いを依頼した場合、依頼をするだけであれば『準委任契約』ですが、もしそれがカップル誕生までを約束するものであれば『請負』契約とも解されます。さらにそのお見合いのためにペットをある程度の時間、主宰者の施設に預けておく場合は後でご説明申しあげる『寄託』契約がプラスされます。
受任者が一生懸命に取り組むことを前提にしてお願いはするけど、一生懸命やってくれたことが間違いなければ結果の成否は問わないよ、というのが主旨の委任・準委任契約に対し、依頼内容が結実しなけならない、という請負う側にとっては委任より厳しい条件になるのが『請負』契約です。
カップルの誕生を信じて依頼したのに成果が伴わない。といったような場合には、合意された内容によって契約種別の解釈は異なります。また、交わされる契約書自体の冒頭に『〇〇契約に基づく〜』などの文言があらかじめ記されていることもあります。
勿論、契約書やその説明自体に民法や消費者契約法に抵触するような違法性や道義違反があれば契約は無効になりますが、カップリングの成功を約したつもりだったのに、契約自体が準委任として交わされており、受任者がお見合いの手配や実行について『善良な管理者の注意義務』を怠っていなければ、事の成否に関しては問われないことになります。
一方、契約が『請負』であった場合、請負契約の目的は当初からカップル成立なので、これが果たされない限り、請け負った側の義務の履行は完成していない事になります。
いずれにしても、契約の段階で、その契約の主旨がどの種の契約に基づくものなのかについて、納得がいくまでお聞きになられたほうがよいと思われます。
依頼された側にとってリスクの高い請負契約ですが、ペットの体毛カットやトリミングは一般的にこの請負契約に属すると考えられます。ペットの、と申しあげましたが人の場合でも同じです。
カットなりセットに行くと、大抵『今日はどのようにいたしましょうか?』と聞かれます。これに応えて、『5cm切ってください』とのリクエストは、5cmカットの委任でも準委任でもなく、理容師さんや美容師さんに5cmのカットの完成を請負わせることを意味しています。もし、ここで仕上がりの状態として明らかに1〜2cmしか切っていない、ということであれば、やり直しを要求することができます。
また、5cmのカットをお願いしたのに、10cmまで切られてしまい、当然リクエストの状態になり得なければ、厳密には5cmカットの請負契約の不履行となるとも考えられます。
なので、『適当にカットで、お任せします。』と頼めば、請負の義務はカットの完了のみになりますので、結果についてはそれが気に入る、気に入らないの主観の問題であって、もし不満であったとしても請負契約の不履行には及びません。
ただ、契約種別は請負でも、そもそも契約事については信義(この場合はマナー・常識と言って良いと思います)が何より優先されるので、日常生活上の『請負』契約についても『委任』と同様、お互いの信義が求められると考えられます。
しかも、これを踏み外してしまえば、民法が規制する『権利の濫用』にあたりかねないことになりますので、依頼した側にとって優位な契約であっても、何か問題が発生した際のやりとりには、かえって注意が必要です。